奥多摩の核戦争

奥多摩の核戦争

最後に,日本が独自に「無慈悲な報復」を確保するための核武装をする(きれい事を言うならば,確証破壊能力をもつ)というケース。

核兵器とそれを運搬する手段を持っても,それだけでは確証破壊能力とは言えず,単なる政治的核兵器に過ぎません。先制攻撃でつぶされてしまえば,それで終わりです。そのような事では,かえって奇襲攻撃を受ける誘因となるだけでしょう。確実に「無慈悲な報復」を行う能力を維持するためには,大量の報復手段を一度の攻撃では除去されないように散らして配置するか,もしくは,追尾できない数の潜水艦に配置するかといったところ。それでは,費用のかかる潜水艦ではなく,地上にばらまこうとした場合,日本という国土で可能なのでしょうか。

一見,これはとんでもなく無謀に思えます。なんと言っても,日本は狭い。ロシアやアメリカとは違います。だが,なかなかの利点もあるのです。

真っ平らな地面は,大型の核兵器で一網打尽ですが(サイロに入れれば頑強になるが,これは位置が固定されてしまう),急峻な沢と小規模の山がごちゃごちゃと続く日本の山岳地形(などという大げさなものではなく,人里からほんの \(1\) キロも離れた里山で十分)は,それぞれの沢ごとに攻撃をしないことには,ちょっとした装備でも生き残れる程度の被害しか,与えられないのです(たぶん)。いずれにせよ,この場合の「生き残る」は,業務を遂行する間の数十分,行動可能ということですが。

日本の小規模の地形では,待避用のトンネルは容易に掘れるし,沢と沢を隔てる山は小さく,トンネルを掘って移動することも,林道を拡張してキャタピラー付きの大型車両が走れるようにすることも,低コスト。

というわけで,奥多摩,奥秩父,南アルプスと山中に林道(にしてはやけに立派)を張り巡らし,自然保護運動団体をねじ伏せてトンネルを掘りまくり,と戦略核ミサイル部隊を展開した場合,それに対する先制攻撃は,人口密度が極めて低い自然公園に大量の核爆発をもたらすという形で行われることになるのだが,これは書く気がしないのです。

我ながら異常な性格だと思うのですが,小学生が絶望のうちに死ぬ描写はできても,森のくまさん,鹿さん,リスさん,うさぎさん,モモンガーさん達が,なぜこんな目に遭うのかわからずに美しい毛並みを焦がして死んでゆく様は,考えたくないのです。これら動物さん達に言わせれば,「今更,そんな遠慮などしなくても,その程度のことなら,あんたたちはしょっちゅうやってるでしょ」となるんでしょうが,やはり考える気になれません。

「短時間に皮膚が,単位面積あたり何カロリーの熱量を吸収すると Ⅲ 度の火傷を負うか」というデータは調べることが出来ても,核攻撃の熱線が浴びたときに,ブロック塀の上で箱座りをしていた猫の毛皮が・・・・・やはり,考えるのは嫌だ。

というわけで,これで終わりにさせていただきたいと思う。