ふざけるな日本

ふざけるな日本!

装置

日本が突然,核武装完了を宣言した。それも,「高々数十発の核兵器をミサイルに積んで飛ばせる」などという,本気で先制攻撃をされたらひとたまりもない「核武装している国なんですよ」というだけの政治的核武装ではなく,「相互確証破壊」をちゃんと実現できる核武装をしたのである。

理屈は簡単(実際は,そう簡単でもないのだが)。

  1. まず,豊富にプルトニウムを使った爆縮型の原爆が点火装置(効率は不問)
  2. それにより点火される巨大な核融合型の反応装置
  3. それを包むタンパーは,運搬など考えずにとてつもない重量の金属
  4. ただし,鉄ではなく全部コバルト

こんなものを運べるわけはないので,設置したのは皇居の直下に設けた特別地下室。要するに,地下に巨大なコバルト製の金庫(どちらかというとコバルトで満タンの備蓄倉庫に近い)を作って,その中に,これでもかと言うほど巨大な水爆を作ったわけだ。

核出力は,およそ \(2,000\) メガトンだが,このむやみに大きな出力(と言えば聞こえが良いが,言い換えるならば,爆発力であり,焼き殺し力)は何が目的かと言うと,「世界を巻き添えにする神風大爆発」ではない。目的は,核融合のおまけの中性子線であり,この中性子線でコバルト \(60\) を大量生産することなのだ。

半減期が五年と少しという文明にとって中途半端な永遠(千分の一になるのに半世紀,百万分の1になるのに一世紀)であり,かつ,その半減期の短さからガンマ線をどんどん飛ばす迷惑きわまりない「汚染物質」コバルト \(60\) を大量生産して,それを成層圏まで登って行く火球に運ばせ,偏西風に載せて世界中にばらまこうというのだ。

東京圏はおそらく一人残らず死に絶える。日本列島は,生存に不向きな土地となる。北米大陸やユーラシア大陸は,もう少しましだが,それでも,新生児の中で成人式を迎えられるのは,少数派となるだろう。もしかしたら,癌の治療は飛躍的に進み,かなりの死亡数を除去できるのかも知れない。だが,その場合でも,人間以外の生き物までは手が回らない。生態系の劇的な変化で,人間の生存が困難になる可能性もある。つまり,耐えられない結果なのだ。

あの執務室

では,再びリアリティー皆無の大統領執務室へ。

それで,日本人共はなにを要求?

なにも。単に抑止力を手に入れただけで,満足なのでしょう

しかし,やることが気持ち悪い。毎朝,神主が地下に降りて行って,起爆解除の儀式をやるなんてなあ

核兵器で吹っ飛ばしてしまってもダメということか。どうせ,ガンマ線探知での自動起爆くらいのことはやってあるだろうし。特殊部隊でうまく奇襲しても,局地的な優位を確保している間に,地下への通路を開けさせて,解除の暗証を聞き出して,それから・・・・・・実際にはリスクが大きすぎてとても

日本人は本気なのか? 自分たちは全滅するのに。しかも,皇居と言えば,日本人が一番大事にする場所のはず。冒涜とは思わないのだろうか。

だがなあ,日本人だからやりかねないという気がするのがなあ。
連中,まさか! このために腹切りとか神風とかがんばって,信用を積み重ねてきたんじゃないだろうな?

そんな長期的プランは,最も日本人らしくない

らしくないか。とにかく,相互確証破壊という意味では我々と同じ事をやっているにしても,毎日解除しない限り起爆,解除してあっても異変があれば自動起爆というのはやり過ぎだろう。本当にそんなことしているのか? 地震だってある国なのに

確かに。自動起爆ではなく手動だったとしても,それに賭けて攻撃してみるわけにはいかんのになあ

ということは,逆に言うと,自動起爆にする必要はないということでは? 目的は抑止であって報復ではないのだから

報復にこだわっている可能性はないのですか。日本人は仇討ちというものが好きなようだし

いや,連中の仇討ちは,恨みではなくて社会復帰みたいなものさ。つまりなあ,生きているから仇討ちをするのであって,自分が死んだ後でも恨みをはらしたいう粘着性はないみたいなんだ。私的な恨みはともかく

ということは,本当は手動?

かもしれない。だが,試しに攻撃してみるのはリスクが大きすぎる

ということは,なおさら自動化する必要ないと言うこと。実際に自動化しておいても,手動だと誤解されて奇襲攻撃されてしまえば,終わり。もちろん,自動化されていなかった場合も,もし攻撃されてしまえば,結果は,敗北という形で終わり。

攻撃を受けてしまったとなれば,日本の立場から見ても,二つの 終わり のどちらがましかと言えば,全滅よりは無条件降伏の方がましですよね。つまり,攻撃が奇襲であろうとなかろうと,全滅を選ぶことはないはずです。

結論としては,自動起爆ではなく手動。そうなると,起爆させるのはどのような場合が考えられるかだ。攻撃を受けていないのに自殺してもしょうがない。攻撃を受けたとしても,報復で全滅しても意味がない。念のため聞きたいのだが,そもそも装置は本物なんだろうか

それは,たぶん本物。偽物だとばれた場合,すぐに本物を作るというわけにはいかないので,連中にとってリスクが大きすぎます。起爆する想定がまったくないにしても

そんなところか。困ったことだ。特に世界が変化したというわけではないのだが。しかし,日本がやったなら我が国も,という連中が騒ぎ出すと収拾がつかなくなる

では,こうしましょう。日本の装置はジョークとして扱ってしまうのです。彼らには,それが本物だと言うことを立証する手段がありません。爆発させてみせるわけにはいかないでしょ。それに,彼らとしても,ジョークではなく本物だ,と宣言し続けておけば,本物かも知れないという可能性だけで抑止力になるはずです。これでみんな幸せ

・・・・・・ジョーク・・・・・・まさか,そもそも最初からジョークとか。この前の仕返しで

さすがに,それは・・・日本だし

でもねえ,この頃,なんだか吹っ切れてしまったようなとこがあるからなあ

そう・・・いずれにしても,ジョーク扱いで良いようですね。これで行きましょう

具体的には?

そうですね。連中の風習では新しく店を開いた友達に大きな花輪を送る習慣があるのです。これを使いましょう。合衆国大統領名で皇居に花輪を送りつけてやりましょう。これで,世界中の国は,日本は私たちに笑いものにされたと思うはずです。花輪につけるメッセージは すごい爆弾さん江 これにしましょう!

こうして,なにやら訳の分からない展開のうちに世界の日常は変化なく続けられることになり,「起爆解除のための神主さんの行進」は「新任大使のための馬車のお出迎え」程度の観光名物となったのである。

ただし,「すごい爆弾さん江」などという花輪と同時に,全世界に向けてのメッセージ:

「米国は同じ冗談を繰り返されることは嫌いです。
こんな冗談をもう一度行う国があったら,なんの検討もせずに即座に攻撃して,
クレーターだらけの月面のような世界にしてしまいますからね!

とまあ,こんなメッセージも送られたのであり,ロシアはロシアで, 「今回だけは米国に免じて我慢してやるけどな」 という態度を示し,これはかなり怖かったのである。

解説

怪しげな議論なのだが,怪しげである理由は「相互確証破壊攻撃による安定」ということ自体にあり,実は,見かけと違って,こいつは論理的な分析には不向き。

表向きの理由は, 相手も理性的に行動すると仮定して理性的に行動する という前提が持ち込む「自己参照」にあるのだが,おそらく現実は,もっと「現実的」なのだろう。たぶん,純粋な合理性よりも,特殊な集団のなかで固定化されてきた「常識」に則っての合理性が支配しているのだと思う。

つまり,特殊な集団の外からは,理解不能。