「あまり意味がない」と言ったが,\(A\), \(B\) ともに\(EX\) を覚悟しているのにしても, 破局を相手の先制攻撃によるものとしたい という「手を汚したくない気持ち」で(機会がある状態である限り)パスを選ぶかも知れないし,それは理解できる。しかし,パスの制限回数 \(p\) が設定されているので,いずれ攻撃が始まることは,避けられない。 確かに,パス回数の制限を課さない方が,「我慢のならない状態でのそれなりの平和」という人間的状況に近いし,また,こちらがゲーム理論としての本道なのだと思う(が,ここでは \(p\) を設定する)。
先手有利な初期配列
前提条件と追加の規則
\(kl\) の値
\(kl>1\) の場合,すべての初期配列は L2-1 により \(DSP\) であり,また,\(EX\) になるまでの経過を調べることはあまり意味がない。 ここからは,\(kl<1\) であることを前提とする。
準安定と \(DSP\)
配列が準安定か否かは,簡単に判定できる。また,その配列が準安定な部分列を含むか否か判定することも,帰結まで調べる必要がないので簡単な作業である。
配列が準安定な部分列を含まないならば,どの部分列も葉になり得ないので,帰結は \(EX\) しかあり得ない。また,準安定な部分列を含むならば,Lemma 1 により帰結は準安定(であり \(EX\) ではない)。 したがって,\(DSP\) であるか否かの判定も簡単な作業である。
初期配列が準安定な部分列を含まない場合,初期配列は \(DSP\) であり,それ以上調べる必要はない。したがって,初期配列が準安定な部分列を含む場合を調べることにする。
設定と便宜的な規則
ゲームの設定に,以下の条件を追加する:
- \(kl < 1\).
- 初期配列は準安定な部分列を含む。
初期配列は準安定な部分列を含むので,Lemma 3 により帰結は安定。したがって,ゲームの終了条件を以下のように変更しても,簡単な作業でもとの条件での合理的経路を復活させることができる:
- 配列 \(S\) が安定になった時点でゲームは終了とし,最終的価値 \(\varphi^{fl}_A,\,\varphi^{fl}_B\) は, \(\varphi_A,\,\varphi_B\) の値として定める。
- 配列 \(S\) が \(DSP\) となった時点でゲームは終了とし,最終的価値 \(\varphi^{fl}_A,\,\varphi^{fl}_B\) は,共に零と定める。
元々の木から,終了規則を追加した木を作る場合,根から枝の分岐を書いて行き,安定な配列の節,もしくは,\(DSP\) が最初に現れた時点で,それを葉と宣言して,そこから先の枝は書き込まないことになる。
先手有利の初期配列
先手が有利な例は,比較的簡単に作れる。簡単と言っても,多くの不等式を並立させる必要があるので,混乱しやすく,また,間違いやすいのだが。
Example.
\(k=\ell=0.2,\,m=n=2\) とする。連続パスの制限回数 \(p\) は,この例では本質的ではないのだが,\(p=2\) としておく。初期配列を $$ I = \begin{pmatrix} 10.101 & 9.899 \\ 1.020 & 1.980 \end{pmatrix} $$ とすると,先手が \(A\) か \(B\) かにより,帰結が異なる:
準安定な部分配列
簡単に確かめられるように,\(I\) の準安定な部分配列は,以下の \(3\) 個のみ:
$$ S_1 = \begin{pmatrix} 10.101 & 0 \\ 1.020 & 1.980 \end{pmatrix} ,\qquad T = \begin{pmatrix} 0 & 9.899 \\ 1.020 & 1.980 \end{pmatrix} ,\qquad S_2 = \begin{pmatrix} 0 & 9.899 \\ 0 & 1.980 \end{pmatrix} $$\(S_1, S_2\) は安定であり, $$ \varphi_A(S_1) = 9.5010,\quad\varphi_B(S_1) = 0.9798 $$ $$ \varphi_A(S_2) = 9.5030,\quad\varphi_B(S_2) = 0.0002 $$ となるが,\(T\) は \(A\) の攻撃により安定な配列 \(S_2\) に変わるので,安定ではない。
帰結
- \(A\) が先手の場合,\(A\) は \(b_1=1.020\) を消去することにより,帰結 \(S_2\) に誘導することができる。
- \(B\) が先手の場合,また,\(A\) が先手であってもパスを選んだ場合,\(B\) は \(a_2=9.899\) を消去することにより,帰結 \(S_1\) に誘導することができる。
したがって,帰結は先手が \(A\) か \(B\) かにより異なる:
- \(A\) が先手の場合: \(\varphi_A(S_2) > \varphi_A(S_1)\) なので,\(A\) は攻撃を選び(配列としての)帰結 \(S_2\) を実現する。
- \(B\)が先手の場合: \(\varphi_B(S_1) > \varphi_B(S_2)\) なので,\(B\) は攻撃を選び(配列としての)帰結 \(S_1\) を実現する。
以上,\(I\) が先手有利な配列であることが示された。トリックは,
- \(a_1 = 10.101\) に対しては, \(B\) の \(2\) 都市が残存していないと \(DSP\) になるのだが,
- \(a_2 = 9.899\) に対しては, \(B\) の \(1\) 都市 \(b_3 =1.980\) のみで準安定になってしまう